【能力不足の契約社員】契約を更新しないと重大なトラブルに?

契約社員の雇止めに注意!! 労務トラブル対応

何度も指導を重ねたのに全然仕事が任せられない…。

ミスが多い上に、改善する気があるのか疑問が浮かぶような勤務態度…。

私はこれまで数多くの能力不足の社員に対する悩みを伺ってきましたが、経営者の苦悩はいつも深刻です。
多くの会社では我慢したり指導を重ねたりしてどうにか事態が改善するのを期待する傾向にありますが、中にはいきなり解雇を検討したり、我慢が限界に達し感情に任せたパワハラまがいの行為に走るといったケースも。

今回は、能力不足の契約社員の労働契約を契約更新しないときに、労務トラブル予防の観点から絶対注意して欲しいポイントをまとめました。

なお、本記事は契約社員を「有期労働契約(契約期間の定めがある労働契約)を結んでいる社員」という定義で記載しています。

イメージ的には仕事内容はパートより正社員に近く、かつ正社員のように定年までの雇用を予定していない社員といった感じです(会社ごとに、若干取り扱いが違うかもしれませんね)。

能力不足の契約社員を契約期間満了で雇止めできる?

さて、能力不足による解雇のハードルって実はかなり高いことはご存知でしたか?!
たとえ試用期間中であっても、能力不足を理由に解雇するのはかなり難しいんです。
では能力不足の契約社員を、契約期間満了をもって雇止め(契約更新しないこと。解雇ではない)することはできるのでしょうか(経験上、雇止めと解雇は混同されがちですね)?!

雇止めも解雇も、契約社員との労働契約を終了させるという点で違いがないものの、解雇に比べると雇止めのハードルは必ずしも高くないのが原則。

というより、有期労働契約を更新しなければ、労働契約は契約期間末で終了するのが原則です。

一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後、引続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限り、その期間満了とともに終了する。

昭和63年3月14日 基発第150号

理由が能力不足であっても、以下の条件をすべて満たす場合は(日頃の注意指導を重ねることは必須ですが)雇止めは可能なケースが多いと考えられます。

  • 業務内容、契約上の地位が臨時的。又は正社員と業務内容や契約上の地位が明確に違う
  • 契約社員が有期労働契約であると明確に認識している
  • 契約更新手続が厳格に行われている
  • 契約社員が過去に雇止めになった例がある

労働契約が切れるときに契約更新しなければ、能力不足が原因でも雇止めできるのが原則だが…

契約社員を雇止めできないケース

ところが、原則どおり雇止めが認められないケースがあるんです。
これらの概念を押さえておかないと、雇止めしようとして労務トラブルが発生する可能性が大!
絶対注意したいポイントを挙げていきます。

雇止めは契約社員の収入を断つことになる!
雇止めできないケースに最大限注意しないと労務トラブルになる!!

雇止め法理による制限

労働契約法第19条に、雇止めを制限する規定が置かれています。これを雇止め法理といいます。

雇止め法理が適用されると雇止めができず、これまでの労働条件と同じ条件で有期雇用契約を更新したとみなされます。

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

労働契約法

単純化してみると、雇止め法理には次の2パターンがあります。

  • 有期労働契約が繰り返し更新されてて、実質的に無期労働契約と同じだよね(第1号)
  • 有期労働契約が更新されることに合理的な期待があるよね(第2号)

雇止め可能なケースが多い条件が欠けている場合、雇止め法理が適用され得ることに注意!!

実質無期契約パターン(第1号)の判例

このパターンの判例として、東芝柳町工場事件(最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決)があります。

  • 基幹臨時工のほとんどが長期雇用されている
  • 会社から長期雇用を期待させる言動がある
  • 労働契約期間満了の都度、直ちに更新の手続をとってないケースがある

などから、雇止め法理が適用され、雇止めが無効になりました。

合理的期待ありパターン(第2号)の判例

このパターンの判例として、日立メディコ事件(最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決)があります。

当初20日間の期間を定めて雇用し、その後期間2箇月の労働契約を5回にわたり更新してきた臨時員を雇止めしたことについて雇止め法理を適用しています。

  • 季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものでない
  • 景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で雇用されるもので、その雇用関係はある程度の継続が期待されていた

ただ、この判例では以下の理由により雇止めは有効と判断されています。

  • 事業上やむを得ない理由によりその人員を削減する必要があった
  • 余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなかった
  • 工場の臨時員全員の雇止めが必要であるとした使用者の判断が合理性に欠ける点がないと認められる

無期転換申込権による制限

有期労働契約の更新を続け、5年を超えて雇用された場合に無期転換申込権が発生します(画像は無期転換ポータルサイト/厚生労働省 https://muki.mhlw.go.jp/)。

経験上見たことはありませんが、1年を超える有期労働契約の場合、1回更新したら無期転換申込権が発生する場合もあります(左図「契約期間が3年の場合」)。

無期転換申込権が行使されると、権利行使の労働契約期間の翌日から無期労働契約となり、雇止めという概念自体が適用されなくなります。
つまり「あなたを雇止めします!」というのはまったく根拠がないことになります。

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

2 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

労働契約法

契約社員の契約更新を繰り返している場合、無期転換申込権を持っている可能性がある

契約社員がいる会社がやっておくべき対策とは?

有期労働契約の契約社員に関する対策j

「自社に契約社員がいる」という会社がやっておくべき対策をまとめます。

雇止めが認められないケースを避け、また不要な労務トラブルが発生するのを予防するために重要なポイントになります。

すでに労務トラブルがいつ起きても不思議ではない中小企業は多い!
心当たりがあれば今すぐ相談を!!

労働条件通知書記載のポイントは?

有期労働契約を結ぶ場合、労働条件通知書に記載しなければいけないことがあります(労働基準法施行規則第5条第1号・第1号の2)。

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

労働契約の期間に関する事項

具体的には以下を記載します。

  • 期間の定めなし
  • 期間の定めあり( 年 月 日~ 年 月 日)

有期労働契約の場合は、「期間の定めあり(契約期間)」と記載することになりますよね。

期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

更新する基準については、通達に例があります(平成24年10月26日基発1026第2)。

【更新の有無】

  • 自動的に更新する
  • 更新する場合があり得る
  • 契約の更新はしない

【契約更新の判断基準】

  • 契約期間満了時の業務量により判断する
  • 労働者の勤務成績、態度により判断する
  • 労働者の能力により判断する
  • 会社の経営状況により判断する
  • 従事している業務の進捗状況により判断する

契約社員の勤務成績、態度、能力を労働契約更新の判断基準にする場合は、労働条件通知書にきちんとそれを記載しておきましょう。

労働条件通知をいい加減にしている中小企業は多い!それは労務リスクを自分で作っているのと同じ!

契約更新手続は厳格に

有期労働契約の更新の手続はきちんと行っていますか?

ふと気づいたら契約満了日を超えてた。契約更新の手続はしてないけど、今までと同じように今日も働いてくれている…。

そんな会社は要注意(ちなみにこのケースは民法629条第1項により労働契約が更新されたものと推定されます)!!
契約更新の手続を怠ったり、更新するか否かの判断をほぼせず基本的に契約を更新している場合、雇止め法理が適用され解雇と同等の理由がなければ労働契約を終了させることができない可能性があります。

有期労働契約の期間が入社日の関係でバラバラ…という会社は、ついうっかり契約更新手続を忘れるケースがあるようです。

期日管理を楽にするため、労働契約期間の満了日を一定のタイミングに合わせるといいでしょう。

労働契約更新の手続をいい加減にするのは、労務トラブルのリスクをわざわざ作っているのと同じ

長期契約の期待値を上げないように

長期契約の期待値を上げる発言をしないよう注意することも必要です。

「君には長く働いてもらいたいと思っている」

「長年勤めているベテランスタッフもいるから、君も安心して働いて欲しい」

このような長期契約を期待させるような発言があった場合、雇止め法理が適用され、解雇と同等の理由がなければ労働契約を終了させることができない可能性があります。

経営者や人事労務担当者はもちろん、現場の上司が(あまり影響を考えることなく)このような発言をしないよう管理しておかないといけません。

能力不足に対する指導は必須

能力不足の場合、日常の注意指導は必須です。
たとえ雇止めが認められる場合であっても、普段何ら注意指導を行わなかったのに、契約期間満了が近づいたある日いきなり雇止めを通知すれば誰だって驚くでしょう?!
収入が途絶える不安から、感情的な対立に発展してもおかしくありません。

契約社員を雇止めできないケース」に該当する、または該当しそうな場合は特に注意指導は大切になります。
雇止めできないケースに該当すれば、能力不足による解雇もやむなしとなったときにようやく労働契約を終了させることができます。

ただ、能力不足による解雇は非常にハードルが高く、多少注意指導を繰り返した程度では認められません。
根気強く注意指導を繰り返し、会社として最大限努力を尽くしたとしても、認められない可能性があります。

指導の際には、達成してもらいたい基準を具体的に示した上で、そこまで能力を引き上げられるようサポートし、頻度の高い面談を行って達成度合いを共通認識として持っておくことが重要。
このとき、退職させる目的で高いハードルを設定したり、パワハラまがいの指導をしたりすることは絶対にダメです。
あくまで目的は、人並みに仕事ができるよう能力を向上させることですから。
注意指導の日時、内容、結果についての記録を残しておくことも忘れずに。

有期労働契約といえど必要な教育を怠ってはいけない!

【注意】雇止め理由証明書

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(厚生労働省告示第357号)第3条により、契約社員から請求されたときに雇止め理由証明書を交付する義務が生じる場合があります。

(雇止め理由の明示)

第三条 前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

2 有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(厚生労働省告示第357号)

この理由は、契約期間の満了とは別の理由を記載しなければいけません(平成15年10月22日基発第1022001号)。
通達で具体例が挙げられています。

イ 第2条関係

「更新しないこととする理由」及び「更新しなかった理由」は、契約期間の満了とは別の理由を明示することを要するものであること。

例えば、

(ア) 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため

(イ) 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため

(ウ) 担当していた業務が終了・中止したため

(エ) 事業縮小のため

(オ) 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

(カ) 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため

等を明示することが考えられるものであること。

平成15年10月22日基発第1022001号

仮に契約社員が雇止めに納得している場合、こんな証明をもらう必要はありませんよね。
雇止め理由証明書を請求してくるということは、労務トラブルに発展する可能性が高いということ。

証明書に「業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため」などと記載しようと思えば、後の争いに備えるためにもきちんとしたエビデンスを残しておかなければ危険です。

労務トラブル予防を考えたときに、「収入がなくなる」ことの重大さを甘く見てはいけない

雇止めが無効にならないためには「採用」が重要?!

人材ポートフォリオ

私の経験上、雇止めができない契約社員がいる会社には共通点があります。

それは?!
求人を出してもなかなか人が採れないこと。

人を採用できないことで有期労働契約の更新を何度も繰り返し、長期に渡って雇用している会社が多いのです。

前述したとおり、長期雇用していれば、雇止めが認められないケースに該当する可能性が高くなります。
なので理想を言えば、有期労働契約の契約社員は短期間の雇用を徹底するか、長期雇用したいなら正社員に転換するかです(無期雇用の契約社員という謎区分は同一労働同一賃金の観点から避けた方がいいと考えます)。
契約社員のまま雇用を継続して、会社の状況によってはスパッと雇止めしてしまおう!という考え方は実に都合が良すぎるということ。

雇止めは
働き口を失う=収入を失う
ことに直結するので、ときに深刻な労務トラブルに発展します。
労務トラブル予防には、人材の新陳代謝に合わせた採用が重要になります。

中小企業の採用は厳しさを増しています。
人手を十分に確保できず仕事の機会を逃したり、最悪人手不足によって倒産する会社も増えています。

なかなか人を採用できない会社は、採用のやり方を間違っているケースが多いのが実情。
これまでのやり方では人が採れないなら、やり方を見直す必要があると思いませんか?!

採用は3年先を見据え、逆算して計画的に行わなければいけません。
目先の人が足りないから…という採用から脱却すべきです。

契約社員の仕組み、見直しの相談はお早めに!

社会保険労務士事務所スリーエスプラス代表大冨

さて、能力不足の契約社員対策を大まかにまとめてみましょう。

  • 現在の契約社員を含めた人事制度の運用を再チェックする
  • 定着してくれる人材を採用できるよう、今の採用プロセスや内容を見直す

まずは現状を省みて、契約社員の働き方について労務リスクがないかを確認しておきましょう。
その際には、この記事のポイントを活用してください。

併せて、採用についても見直しが必要じゃないかチェックしましょう。
あなたの会社の採用がうまくいっているのか、うまくいってないならば何がボトルネックになっているのか。
採用プロセスごとにしっかりと課題を洗い出してみましょう。

社会保険労務士事務所スリーエスプラスでは、人事制度の見直しや採用支援を承っています。
これらの課題を解決するには、ある程度長い時間がかかります。
今アクションを起こさなければ労務リスクは膨らみ続け、いつ爆発するかわからない風船を抱えたような状況のまま。
今すぐご相談頂くことで労務リスクを抑え、厳しい環境下でも成長できる企業になるためのスタートを切ることができます!

何を相談すればいいのかよくわからない…という方も大丈夫!
経験豊富な社労士が親身にお話を伺い、課題を洗い出します。

監修:大冨伸之助(社会保険労務士)

広島県社会保険労務士会所属。2004年(平成16年)社労士試験合格、翌年登録。
「社員よし、顧客よし、会社よしの仕組み創り」をテーマに、採用定着支援・労務相談対応・人事制度設計・バックオフィスのIT化支援・確定拠出年金導入支援を行う。
約10年の社労士実務経験以外に約8年の会計実務経験があり、経営的視点から中小企業の経営者の決断を支える。
”smile” ”speed” “security”を仕事の基本スタンスとし、頭文字を取り事務所名を「社会保険労務士事務所スリーエスプラス」とした。
広島市生まれの呉市育ち。
広島県外に住んだことがなく強めの広島弁が特徴だが、オンラインで全国対応可。

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