試用期間の延長、労務トラブルを防ぐための3つのポイント

リスクについて話し合うイメージ 労務トラブル対応
労務担当者
労務担当者

社長、おはようございます!

どうされたんですか?…もしかして、何かお悩みですか?!

社長
社長

おはようございます

そうなんですよ

先日採用した方を本採用すべきかどうか検討しているんですよね

中途入社で即戦力になってくれるのを期待しているんですけど、試用期間がまもなく終わりそうですが今のところ期待に応えてくれる確信が持てなくてね…

労務担当者
労務担当者

となると、試用期間の延長を検討するという選択肢もありますよね…

気をつけることがないか、顧問社労士に聞いてみます!

試用期間の延長とは?

入社から一定期間を試用期間とし、試用期間中に働きぶりを見てその後本採用するという会社は多いです。
最初に、統計データから見てみましょう。

少し古いデータになりますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が行った2012年のアンケート調査では、約87%の会社が「試用期間あり」と回答しており、社員数が多い会社の方がその割合が高いとの結果でした。

同調査によれば、試用期間の長さについては、「3か月程度」という回答が新卒者、中途採用ともに約66%と最多でした(次に多いのが「6か月程度」で、新卒者の場合約18%、中途採用の場合約17%)。

試用期間を設定している会社が多く、試用期間の長さは3か月程度が最も多い

「試用期間を延長することがある」と回答した企業の割合

試用期間の延長についても調査が行われており、

「延長することがあり、ここ 5 年間においてそうした事例がある」が 13.1%、「延長することがあるが、ここ 5 年間にはそうした事例はない」が 30.9%

つまり「試用期間を延長することがある」と回答した会社は合計44%、社員数が多い会社ほどその割合が高くなっていました。

試用期間を延長する規定がある会社は過半数を割っているものの水準は高い

試用期間の延長って可能?

試用期間がどういう期間か?という課題は、過去記事試用期間中なら能力不足の新入社員を解雇できる?!で書きました。

試用期間=解約権留保付きの労働契約で、「採用当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合」+「試用期間中の者を引き続き雇用するのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合」に、試用期間に解雇できるんでしたよね?!

一言でざっくり言えば、試用期間だからと自由に解雇できない、ということでした。

では、試用期間の延長って、そもそもできる(労務管理上問題ない)んでしょうか?
実務上には解雇はやはり難しいとはいえ、試用期間という不安定な状態を延長することは社員にとって不利で、一見問題があるようにも思えます。

【ポイント1】試用期間の延長は就業規則で規定が必要?

試用期間の延長の是非を巡って争われた裁判例では、試用期間の延長が可能な要件として次を挙げています(ウエストロージャパン)。

  • 就業規則や労働契約で、試用期間延長の可能性と延長期間が明定されていること
  • 職務能力、適格性について調査を尽くしたが、当初予定した期間では採否の判断が困難で、さらに相当な期間、必要な調査を尽くして職務能力、適格性を見出すためであること【理由1】
  • 職務能力、適格性に問題があるが、なお労働者に相当な期間を付与するためであること【理由2】

よって、試用期間を延長するためには、就業規則に明記することと、理由1又は2が示すように合理的な理由が必要です。

なお、上記裁判例では「就業規則や労働契約」としていますが、常時10人以上の社員を使用し、就業規則の届出義務がある会社においては、就業規則に定める方が安全だと思われます(労働契約法第12条により、就業規則より条件が悪い労働契約は、その部分が無効になり就業規則の基準を当てはめることになるから)。

試用期間の延長には就業規則の定め合理的な理由が必要

試用期間を延長する際の注意点

失敗と成功のイメージ

就業規則に試用期間を延長する可能性がある旨の定めがあり、かつ合理的な理由がある場合でも、試用期間を延長するに当たって注意すべき点があります。

【ポイント2】試用期間を延長する期間

試用期間を延長すると就業規則に定めていて、合理的な延長理由があっても、あまりに延長後の期間が長い場合は労務トラブルの可能性が出てきます。

例えば
見習社員→試用社員→(社員登用試験合格後)社員
という仕組みを採っていたブラザー工業事件において、「試用期間中の労働者は不安定な地位に置かれるものであるから、労働者の労働能力や勤務態度等についての価値判断を行なうのに必要な合理的範囲を越えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し、その限りにおいて無効であると解するのが相当」とした上で次のように判断しています。

「見習社員としての試用期間(最短の者で6か月ないし9か月、最長の者で1年ないし1年3か月)中に『会社従業員としての会社における業務に対する適性』を会社が判断することは充分可能」なため「会社が見習社員から試用社員に登用した者について更に6か月ないし1年の試用期間を設け、…社員登用のための選考を行なわなければならない合理的な必要性はないものというべき」として、試用社員としての期間を、合理的範囲を越えているものと結論づけました(結果、試用社員に登用された際に会社の正規従業員(社員)たる地位を取得したものとされました)。

また、延長期間を定めずに試用期間を延長した事例(上原製作所事件)では、「期限を定めずになされた延長は、相当な期間を超える限度において無効というべき」としています。

試用期間の延長期間が長ければ、労務トラブルにつながることがある

【ポイント3】試用期間延長の通知

試用期間を延長する際には、社員に対して試用期間満了前に通知をすることが大事です。

通知は、労務トラブルに発展することを避けるため、面談で延長の理由を説明した上で、書面で行うようにしましょう。

上原製作所事件において、「試用期間満了日において期間延長の意思表示のなされない場合は、同一条件の試用が継続するものとする。」という就業規則の定めから、試用期間を延長する際にはその旨の告知をすることは当然とし、社員に試用期間延長の通知をしていないことが労働者の主張を認める判断の一因になっています。

試用期間延長の通知は、試用期間が満了する前に、書面で行うべき

試用期間の延長は慎重に

成功のイメージ

試用期間中の解雇もそうですが、試用期間の延長も決してハードルが低いものではないことが見えてきたかと思います。

とはいえ、実際に試用期間中に採否の判断がつかないこともあり、会社としては試用期間延長の対策はしておいた方が無難です。

この記事で説明した3つのポイントを押さえて、労務トラブルを予防しましょう!

試用期間の延長に伴う労務トラブル予防のためには、就業規則の定めが欠かせません。
社会保険労務士事務所スリーエスプラスでは、就業規則に関するご相談を承っています。

労務トラブル対策は予防が一番重要ですが、リスクはいつ顕在化するか分からないもの。
気になる点があれば、すぐに行動することが大切です!

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