試用期間中のパート解雇、経営者・人事部が知っておくべきこと

リスクのイメージ 労務トラブル対応
労務担当者
労務担当者

部長、おはようございます!

…どうされたんですか?
今日も何かお悩みの感じですが…?!

部長
部長

おはよう
そうなんだよ
この前採用したパートさん、接客態度がすごく悪くて遂に苦情が入ってね…

パートだし、すぐ解雇できるかな?

そうそう、試用期間中でもあるんだよ!

労務担当者
労務担当者

試用期間だからって簡単に解雇できないはずですが
正社員じゃなくてパートならハードルは低いのかな…?

ちょっと顧問社労士に聞いてみますね!

試用期間中の解雇

試用期間中だからといって簡単に解雇できないのは、過去記事「試用期間中なら能力不足の新入社員を解雇できる?!」にも書いたとおりです。

過去記事はいわゆる「能力不足」によるもので、冒頭の事例のような「勤務態度の悪さ」ではないのですが、仮に勤務態度が悪いからといって充分な指導もせずに解雇することは基本的に難しいです(勤務態度が問題の一つとして取り上げられた事例としては「有限会社X設計事件」「ブレーンベース事件」等があります)。

なお、「試用期間14日以内なら解雇できるんじゃないの!?」とおっしゃる方がいますが、これは解雇予告手当を払わなくていいというだけで、解雇しても問題が起こらないということではありません。

労働基準法

(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。
三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
【以下省略】

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。
但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、
第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合
又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、
この限りでない。

一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者

労働基準法より抜粋 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

試用期間中といえど、充分な指導もせずすぐに解雇するのは難しい!

パートの解雇は正社員よりも簡単?!

悩んでいるイメージ

正社員の解雇が難しいという認識は、ほとんどの方がお持ちです。
では、パートはどうでしょう?
仕事上の責任が正社員より軽いから、働く時間・日数が正社員に比べて少ないから、正規雇用じゃないから(?)等の理由で、正社員よりも簡単に解雇できると思われている方、いらっしゃいませんか?!

パートタイマーは正社員よりも解雇しやすいということはないです。

解雇について定めた労働契約法第16条は、正社員とパート(非正規社員)の区別をしていません(パートも正社員も、同法第2条に定義される「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」には変わりないので)。
パートであっても、客観的合理性・社会通念上の相当性がない解雇は、裁判で争えば無効と判断されることになります。

もし「パートは正社員よりも解雇しやすい」と勘違いされている方がいらっしゃったら、認識を改めないとトラブルになるリスクがあります。

労働契約法

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128

パートだから正社員よりも解雇のハードルが低いというのは大間違い

有期契約期間中の解雇はさらにハードルが高い

ところで、あなたの会社では、パートさんと期間を定めた労働契約(例えば1年ごとに契約を更新する、契約更新型の労働契約)を結んでいますか?
それとも、正社員と同じように定年まで働いてもらうことを前提に、期間を定めることなく労働契約を結んでいますか?

もし契約更新型の労働契約ならば、契約期間中の解雇については特に注意すべき点があります。

その根拠が、労働契約法第17条第1項にあります。

労働契約法

(契約期間中の解雇等)
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

労働契約法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128

上の雇用期間の定めがある労働契約(つまり契約更新型の労働契約ですね)は、契約期間中は「やむを得ない事由がある場合でなければ」解雇できないことになっていますね?
これは先程登場した労働契約法第16条よりも解雇のハードルが高い、「客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情」とされています。

つまり、労働契約期間満了を待つことなく、直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由であることが求められているのです。

よって、契約更新型の労働契約の場合、よほどのことがなければ契約期間満了で、次の更新はしないという雇い止めを選択すべきということになります(ただ、契約更新を長期間続けている等で雇い止めが認められないことがある点に注意)。

ちなみにこの「やむを得ない事由」の存在については、裁判での争いになった場合、会社側が立証しなければいけません。

契約更新型の労働契約を結んでいるパートの解雇は、無期雇用の正社員よりもハードルが高い!

試用期間でなく、短期間契約で働きぶりを見る

問題解決のイメージ

さて、これまでのお話をまとめてみると、

  • パートでも、試用期間中の解雇は簡単ではない
  • パートの解雇が正社員に比べて簡単ということはない
  • 契約更新型のパートを契約期間の途中で解雇するのは特に難しい

ということが分かったと思います。

では冒頭のように、勤務態度が悪いパートがいて困っている場合の対策はどうすればいいんでしょうか!?

ポイントは次のとおり。

  1. 試用期間は設定しなくてもいい
  2. 働きぶりが確認できるまでは短期間の契約更新型労働契約を結ぶ
  3. 勤務態度が悪い等の問題があれば、契約を更新せず雇い止めする

【1.試用期間は設定しなくてもいい】について

試用期間中であっても解雇が簡単でないならば、パートについては無理に使用期間を設定する必要はないと個人的には考えています。

試用期間がない代わりに、短期間の契約更新型の労働契約を結び、働きぶりを見ればいいんですね。

なお、契約更新型の労働契約の途中(かつ試用期間中)で解雇され争った事例として、リーディング証券事件があります。
この裁判例では「解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当」かつ「雇用期間の満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由」があるとして、解雇有効となっています(試用期間の性質を認めているということは、通常の解雇よりも若干緩和されてはいるんですが…)。

【2.働きぶりが確認できるまでは短期間の契約更新型労働契約を結ぶ】について

契約更新型の労働契約の場合、契約期間の途中で解雇するのは非常にハードルが高いです。
まだ働きぶりが分からないうちは、契約期間を短めに設定する方が無難です(例えば最初の契約からいきなり1年ではなく、まずは3か月の契約を結ぶ等)。

なお、契約更新をする場合は、きちんと更新前に新しい労働契約書を交わす等のプロセスを踏まないといけません

【3.勤務態度が悪い等の問題があれば、契約を更新せず雇い止めする】について

採用したパートの勤務態度に問題がある等で雇用の継続が難しい場合には、契約期間満了の際に次の契約を更新せず、雇い止めすることです。

契約更新型の労働契約の場合、契約期間が満了したら原則として退職することになります(自動更新としている場合を除きます)。
正社員等のように定年まで継続勤務する労働契約での解雇は、とにかく会社側の指導教育が尽くされてもなお改善しなかったことが必要になりますが、そもそも雇い止めは解雇とは違います。

契約更新をしないので、原則どおり退職となります、という話ですね。

この場合、注意すべきポイントは次のとおり。

  • 労働契約は自動更新にせず、「更新する場合がある」としておく
  • 人手不足を理由に、ムリに契約更新を重ねない

特に人手不足の業種では、多少問題があっても目をつぶって更新を続けるケースがあり、年月が経って「やっぱりもうムリ!」とばかりに雇い止めしようとすることがありますが、これは非常にリスクがあります。

また、次の条件に当てはまるパートを雇い止めする場合、あらかじめ契約更新をしないことを明示している場合を除いて30日以上前に雇い止めの予告が必要なので注意して下さい。

  • 契約更新型の労働契約を3回以上更新している
  • 1年以下の契約期間の労働契約が更新又は反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超えている
  • 1年を超える契約期間の労働契約を締結している

パートの解雇、雇い止めの相談は顧問社労士に

今回はパートの解雇について説明しました。

この記事を、労務トラブルの予防に役立てて頂ければ嬉しいです。

現在既に労務トラブルが起こりそう、という場合はできる限り早めに顧問社労士にトラブル予防の相談をされることをオススメします。

社会保険労務士事務所スリーエスプラスでは、労務トラブル予防のための相談対応をメインサービスにしています。

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約10年の実務経験の中で、初動が遅れる程トラブルが大きくなるケースを度々見てきました。

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監修:大冨伸之助(社会保険労務士)

広島県社会保険労務士会所属。2004年(平成16年)社労士試験合格、翌年登録。
「社員よし、顧客よし、会社よしの仕組み創り」をテーマに、労務相談対応・人事制度設計・バックオフィスのIT化支援を行う。
約10年の社労士実務経験以外に約8年の会計実務経験があり、経営的視点から中小企業の経営者の決断を支える。
”smile” ”speed” “security”を仕事の基本スタンスとし、頭文字を取り事務所名を「社会保険労務士事務所スリーエスプラス」とした。
広島市生まれの呉市育ち。
広島県外に住んだことがなく強めの広島弁が特徴だが、オンラインで全国対応可。

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