メンタルヘルス不調|社員が診断書を提出してきた時注意したいこと

メンタルヘルス不調 労務トラブル対応
労務担当
労務担当

社長…
最近体調不良で休みがちだったAさんから
メンタルヘルス不調の診断書が提出されました

社長
社長

そうですか…
まずはしっかり治して元気になって欲しいですね
しかし、会社としてどう対応するのがいいでしょうかね?!
気をつけなきゃいけないことはあるんでしょうか?

労務担当
労務担当

デリケートな問題ですし…
顧問社労士に相談してみますね!!

昨今大きな問題になっているメンタルヘルス不調
厚生労働省の「令和4年労働安全衛生調査」によると、令和3年11月から令和4年10月までの期間で、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した社員又は退職した社員がいた事業所の割合が13.3%に登ったそうです。
中小企業においても、メンタルヘルス不調の問題は決して他人事ではありません。
私の実務経験でも、社員にメンタルヘルス不調者が出て対応に苦慮しているという相談は非常に多く寄せられました。

今回は、相談ケースが多い「メンタルヘルス不調を訴える社員が診断書を提出してきた」ときの対応と、気をつけるべき労務リスクについて説明します。

診断書の確認

まず、診断書を受け取ったら、診断書の内容をしっかりと確認することが大切です。
診断書には、病名や症状、休業が必要な期間等が記載されています。

診断書確認後、可能であれば社員と面談を行い、病状や症状、休職の希望などについて、話を聞きます。また、休職中に療養に専念できるよう、傷病手当金や休職中の給与・社会保険の手続き、職場復帰支援等について説明します。

安全配慮義務違反に注意!

休業が必要という診断書が出ている場合、ムリをして業務の引き継ぎをしてもらうことは基本的に避けるべきです。
病気なのが分かっている上でムリに働いてもらい、万一症状が悪化したとなれば、会社が社員に対して負っている「安全配慮義務(仕事の過程において社員の生命・身体等の安全に配慮する義務)」に違反しているとして、責任を問われる可能性があるからです。
本人が引き継ぎすることを希望したとしても、症状の悪化が予見でき、その危険を回避するための措置を取らなった場合はやはり会社が責任を問われる可能性があるので、慎重な判断が必要です。

メンタルヘルス不調による休職の手続と気をつけたい点

休業が必要な場合は、会社の就業規則の定めに従って休職の手続を進めます。
休職は、会社がその必要性を判断して社員に命じることになります。
社員が診断書を提出した上で休職を希望したら、それだけをもって休職に入るのではないことをはっきりしておくべきでしょう。

休職を命じるときには、必ず文書で通知しましょう。
特に、休職期間や、休職中の給与に関すること、休職中の社会保険料の自己負担分や住民税の振込先・振込期日等、トラブルの元になる情報は明記すべきです(お金関係をあいまいにすると、概ねトラブルの基になります)。

休職が始まったら、定期的に以下のタスクを処理します。

  • (社員が健康保険被保険者である場合)傷病手当金の支給申請を行う
  • 体調等をヒアリング
  • 立替えたお金の回収管理

傷病手当金の申請は、概ね1か月ごとに行いましょう。
何か月も申請しないままだと、社員にお金が入ってこず困ることが予想されます。
また、診断書に記載された休業が必要な期限が切れる頃に、休職継続の必要性を確認するために再度診断書の提出を求めます。

就業規則で休職のタイミングを確認すること

就業規則には私傷病時の休職に関して規定を置いていることが多いのですが、休職を発令するタイミングに気をつけなければいけません。
例えば、就業規則に「欠勤が連続して1か月以上続き、なお回復が見込めない場合」に休職を命じるというルールがあるとします。
それにも関わらず、(欠勤が連続1か月以上続くというルールを無視して)診断書が提出された日から休職を命じたら、後にトラブルに発展する可能性が出てきます。

具体的には、トラブルは休職期間が終わっても体調が回復せず、退職になるときに発生します。
仮に6か月間休職ができるルールになっていた場合、就業規則の定め通りならば
1か月欠勤→6か月休職→退職
だったはずが、
いきなり6か月休職→退職
と1か月早いタイミングで退職することになるからです。
社員が復職を望んでいる場合、1か月早く退職させられたのはおかしいと争うことが予想されます。

休職にかんする就業規則の定めは詳細に

就業規則には、休職の定めをできるだけ詳細に定めておくべきです。
よく、あいまいな定義や必要なことがほとんど書かれていない就業規則を目にすることがありますが、これらの解釈を巡って社員とトラブルになる可能性があります。
また、(正社員用の就業規則ではまれですが)休職の定め自体がないこともあります。
では、休職の定めがないからといって欠勤が続いている社員を即退職させていいのか…ということになると、そうともいきません。原則、数か月は様子を見ることにすべきです。
加えて、正社員には休職制度があるのにパートタイマー等の非正規社員には休職の定めがない場合には、同一労働同一賃金の観点から問題になる可能性があります。

休職期間満了前のリマインドは必須

休職を命じる際は、休職期間等を記載した書面を社員に渡しましょう。
そして、休職期間が終わる少し前のタイミングで、再度書面でリマインドするようにするとトラブルの予防になります。

立替金の回収不能を予防すること

社員が休職中でも、社会保険料や住民税はかかります。
これらは通常、会社が立替払いしておき、社員から回収することになります。
(就業規則の定めによりますが)休職中は給与が支払われないことがほとんどで、健康保険に加入している社員については傷病手当金が主な収入になります。
社会保険料は高額なため、数か月分ためてしまうと支払いが難しくなることがあります。
きちんと毎月一定期日に振込むようあらかじめ合意形成しておくことが大事です。
なお、以前は傷病手当金を会社が代理で受け取り、社会保険料等を差し引いた残額を社員の口座に振込むことができましたが、現在では原則代理受領が認められないため、確実な回収を心がけましょう。

療養専念義務違反による処分は慎重に

メンタルヘルス不調で休職中の社員が、休職中に旅行に行っていた等の相談が寄せられることがあります(裁判例もあります。私も過去、昼間から遊び歩く姿が度々目撃されて困っているという相談を実際に受けたこともあります)。

「病気で休職中なのにけしからん!」
という気持ちも理解できますが、その事実をもって即懲戒処分は慎重にすべきです。
なぜかというと、旅行が療養にプラスに働くという場合も想定されるからです。
この場合、主治医や産業医等から旅行が療養にプラスなのかマイナスなのかの意見をもらい、仮にマイナスであるならば会社の秩序を乱した(休職制度を悪用した)との理由で懲戒処分を検討できますが、はっきりと「療養にマイナスである」という意見は、実際には得にくいと思われます。

【まとめ】メンタルヘルス不調で診断書が提出されたときの対応

今回は、メンタルヘルス不調の社員から診断書が提出されたときの対応と労務リスクについて説明しました。
休職は気をつけるべき点が多く、特にメンタルヘルス不調の場合は休職期間が長くなりがちで復職が難しいケースも多く、トラブルになる要素が多いです。
私もこれまで多くのメンタルヘルス不調についての相談を受けましたが、実際にメンタルヘルス不調者が出ると経営者様や人事労務担当者様は、どう対応すればいいかで悩まれるようです。

まず必要なことは、メンタルヘルス不調の原因になり得る要素を可能なかぎり職場から排除していくことと、就業規則の休職の定めの確認・見直しでしょう。

実際にメンタルヘルス不調者が出たことで、就業規則の定めの不備、脆弱性に初めて気付くケースもあります。
問題が発生する前に、現在の就業規則について、社労士に相談されることをオススメします。

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