【社長必見】「管理職だから残業代なし」が間違っている理由とは?

労務の課題 労務相談
富永課長
富永課長

岡野さんとABC商事様の商談に行ってきます!

労務担当者
労務担当者

頑張って下さいね!!

社長
社長

富永君、昨日も遅くまで今日の商談の準備をしていたようですね!?
大抜擢!期待の最年少課長、仕事熱心でいいですね!

労務担当者
労務担当者

社長、ところで富永課長のお給料ですが、
今月分から残業代は支払わないということでいいんですか?

社長
社長

彼は「課長」ですから、残業代は必要ないでしょう
確か、休日出勤の手当も要らないですよね?

課長以上は残業代を支払わない」
管理職(役職者)だから休日割増は必要ない」

経験上、このような運用をしている企業様は割と多く見られます。
ですが、「課長だから」「管理職だから」という理由で一律に残業代や休日出勤手当を支払わないことは、思わぬ労務リスクにつながることがあります。

今回は、管理職と残業代(以下、休日割増賃金も含めます)にまつわる労務リスクと、対策についてお伝えします。

残業代がつかない根拠は何!?

まず、残業代がつかない根拠について正しく理解することが大事です。
根拠は、労働基準法第41条第2号ですね。

法的根拠はいいわ…という方は次の見出しまで飛んで下さい。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

労働基準法第41条

この規定により、「監督若しくは管理の地位にある者」(いわゆる「管理監督者」)については、残業代や休日出勤手当は発生しないということになります。

「え?だったら管理職は残業代要らないってことにならないの?」

という話になりますよね?!次に何故労務リスクにつながるのかを説明しましょう。

管理職=”管理監督者”!?

管理職に残業代を支払わないことが労務リスクにつながるイメージをご覧下さい。

先程、労働基準法が定める管理監督者は残業代が要らないという話をしました。
問題は、

(会社でいうところの)管理職=(労働基準法でいうところの)管理監督者

この「=」関係が成立しない場合があるということなんですね。
もうちょっと言えば、「会社の職位制度上で管理職かどうかは残業代の要否とは全く関係ないですわ」ということです…。

(会社でいうところの)管理職が(労働基準法でいうところの)管理監督者に該当しないのに、残業代を支払っていない → 労務リスク発生!!

”管理監督者”かどうかの判断は!?

管理監督者に該当するかどうかの判断ですが、これがなかなか杓子定規に決められません…。

「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します。
企業内で管理職とされていても、次に掲げる判断基準に基づき総合的に判断した結果、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合には、労働基準法で定める労働時間等の規制を受け、時間外割増賃金や休日割増賃金の支払が必要となります。

厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf)抜粋

判断基準は次の通り。

  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること
  • 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
  • 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること
厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf)抜粋

これらの基準を総合的に勘案し、労働基準法でいう管理監督者かどうかが決まる…という非常に悩ましい(一概に判断できない)概念なんですね。

ただ逆に、非常に労務リスクが高い状況をピックアップすることは、そこまで難しくはありません。

  • 全く経営に参画していない
  • 裁量の範囲が狭く、経営者や上司の決裁を受けなければいけない
  • 遅刻や早退により給与が控除される、出退勤の自由が基本的に認められていない
  • ヒラ社員とあまり給与の差がない、ヒラ社員が残業すると容易に給与逆転が生じる

あなたの会社の管理職がこのような状況にある上で残業代を支払っていなければ、既にかなり危険な状態になっていると言えます。

労働基準法の管理監督者に該当するかは複数の基準での総合判断になる
少なくともヒラ社員との給与逆転が頻繁に起きる場合は、リスクが高い

管理監督者性が否定されるとどうなる!?

管理職に残業代を支払ってない場合に、(労働基準法でいうところの)管理監督者としての地位を否定されるとどういう労務リスクが顕在化するかというと…。

未払になっている残業代を支払え

という結論に至ります。
管理職だからということで残業代を支払っていない期間が長く、かつ長時間労働が当たり前の状態が続いていたとしたら、未払残業代はかなりの高額になる可能性があります。

この課題はできる限り早期に解決しなければ、労務リスクは膨張しながら残り続けることになります。

管理監督者性の否定は、未払残業代の支払に直結する

労務リスクへの対応策

労務リスク解決

リスクへの対応策は、おおまかに言えば次の通りでしょうか。

  1. 裁量、権限をはっきりさせる
  2. 待遇を見直す

裁量、権限をはっきりさせる

管理職といっても、裁量・権限がほとんどないケースも見られます。
まずは管理職の裁量・権限についてはっきりと定義してみましょう。
その上で、大きい裁量がある、権限を持っていると思えなければ、取扱いを再考すべきかも知れません。

待遇を見直す

ヒラ社員と給与があまり変わらない、残業代を含めると簡単にヒラ社員が管理職を逆転する状況は、早急に見直すべきでしょう。
ただ、管理職の職責に対して厚い待遇をしなければ元も子もありません。
給与だけを上げれば職責とコストが釣り合わず、また、そもそも裁量・権限がなければ待遇だけが良くても管理監督者性を否定される可能性があります。

この点は、単なる対策という枠を超えて、人事制度の見直しまで視野に入れて考える必要があるかも知れませんね。

管理監督者を巡るリスクはゼロにはならない

管理職に残業代を支払わない場合、管理監督者かどうかを巡る労務リスクはゼロにはならないと私は考えています。

前述したように、管理監督者かどうかの判断は、複数の基準を総合勘案して下されるため、争いが生じた際に会社の認識が否定される可能性が残るからです。

労務リスク発生の可能性を抑えるためには、

  • 現状を把握し、早急に対策を実施する
  • 社員と信頼関係を築ける会社づくりに注力する

この両輪が大事かなと思います(そもそも主に労使トラブルによってこの問題が顕在化します。ただし給与逆転については行政の調査で労務リスクが顕在化することがあるので注意)。

そしてこの記事を読んで不安になったあなたは、顧問社労士に相談することをオススメします。

なお社会保険労務士事務所スリーエスプラスでは、潜在的な労務リスク予防や給与の見直し等のご相談に対応しています。
お気軽にお問い合わせ下さいね!!

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