【注意】知らないとマズい!最低賃金の計算方法等5つの注意点

労務相談

2023年の最低賃金の増加額(全国加重平均)は、過去最高額の43円アップになる予定です。

今後最低限必要なアクションとしては、10月までに、あなたの会社の事業場がある地域の最低賃金額を確認すること。
そして、必要に応じて給与額を変更することです。

「そんなことは毎年やってるよ!」
というあなたのために、今回はちょっとドキッとする注意点をピックアップしてみます。

「それは知らなかった!!」
というポイントがあったら、改めて最低賃金の確認をしてみて下さいね!

【ポイント1】月給者の最低賃金の計算方法は間違いない?!

最低賃金は時給で発表されます。
そのため、時給者については最低賃金を上回っているかの確認をされると思います(ちなみにアルバイトやパート等の非正規社員にも最低賃金は適用されます)。

それでは、月給者の最低賃金チェックは実施されていますか(時給換算して最低賃金と比較が必要です)?!

「もちろん、ちゃんとチェックしてるよ!」

そんなあなたも、「正しい計算」に基づきチェックができているかどうか、計算方法を今一度確認してみましょう!

月給者の最低賃金をチェックするには…

  1. 含めることができない賃金を除く
  2. 1か月の平均所定労働時間で割る

ことが必要です。

まずは「1」について。
月給者の最低賃金を確認する上で、含めることができない賃金の除外は重要です。
計算から除外しなければならないのは、以下の賃金です(最低賃金法第4条第3項・最低賃金法施行規則第1条)。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 所定労働時間(契約上働くべき時間。例えば1日8時間)を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金等)
  • 所定労働日(契約上働くべき日。例えば平日)以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金等)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金等)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

これらを含めた金額で、計算していませんか?!

最低賃金の計算に含めてはいけない手当がある!

次に「2」について。
月給については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で割った金額で時給を算出しなければいけません(最低賃金法施行規則第2条第1項第3号)。

多くの会社では、月ごとに所定労働時間数が異なると思いますので、時給を算出するにあたっては1年間の所定労働時間を12で割って「1か月平均の所定労働時間」を計算し、

月給 ÷ 1か月平均の所定労働時間 = 時給

で出た金額を最低賃金と比べる必要があります。
ちなみに、最低賃金法施行規則第2条は、月給以外の場合の最低賃金の計算についても定義がありますので(日給、週給等)、必要に応じて計算方法を確認してみるといいですね。

月給者も最低賃金のチェックが必要!時給換算するときの計算式も正しく押さえよう!

【ポイント2】県をまたいだ事業場に出張する社員の最低賃金は?!

最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります(最低賃金法第9条・第15条)。
地域ごとに決められているのは、地域別最低賃金ですね(特定最低賃金は産業別に決まっています。後述)。
ポイント2と3は、「地域別最低賃金」に関する問題です。

県が異なる2つ以上の事業場(原則として場所的に独立した拠点のことで、例えばA県にある本社とB県にある支店)がある会社で、本社所属の社員が支店に出張して働いた場合、どちらの県の地域別最低賃金の金額が適用されるでしょうか!?
本社(A県)で勤務した労働時間についてはA県で、支店(B県)で勤務した労働時間についてはB県の金額を適用するのでしょうか?

答えは、出張中の労働時間についても、所属している本社がある県(例ではA県)の地域別最低賃金を適用することになります。
ただし、雇用契約上どこに所属しているかがあいまいな場合や2つ以上の事業場にそれぞれ所属している場合、(実態はさておき契約上)わざと最低賃金が低い県の事業場所属としている場合は上記の限りではありません。
トラブルを予防しようと思ったら、社員の所属をきちんと明らかにする必要がありますね。

出張中の社員に適用される地域別最低賃金は所属している事業場がある都道府県の最低賃金

【ポイント3】在宅勤務の場合の最低賃金は?!

さて、本社がA県にある会社で、在宅勤務(フルリモート)の社員を雇いました。
その社員は、C県に住んでいます。
では、この在宅勤務の社員の最低賃金はどの地域の金額を適用するのでしょうか?!
自宅がある都道府県?本社がある都道府県?

答えは、「在宅勤務する社員が所属している事業場(本店や支店等)がある都道府県」の最低賃金となります(令和3年3月25日基発0325第2号、雇均発0325第3号)。
自宅がある都道府県はないので注意が必要です。

フルリモート勤務の社員に適用される地域別最低賃金は自宅がある都道府県ではない

【ポイント4】派遣社員を他県に派遣する場合の最低賃金は?!

このポイントについては、いわゆる「派遣元」の会社(派遣業を行っている会社)が対象になります。
「うちは派遣先なんだけど?」という会社は関係ないのでご注意を。

派遣会社(派遣元)が、他の県の派遣先に社員を派遣した場合、その派遣社員には派遣先がある県の地域別最低賃金が適用されます(最低賃金法第13条・平成21年3月31日基発0331010号・平成31年3月29日基発0329第4号)。
ポイント2で紹介した、「所属している事業場がある県の地域別最低賃金を適用する」原則とは異なるので、気をつけて下さい。

派遣社員に適用される地域別最低賃金は派遣先の事業場がある都道府県の最低賃金

【ポイント5】特定(産業別)最低賃金が適用される対象者は?!

ポイント2で、最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があるという話をしました。
特定最低賃金は地域別最低賃金を上回る金額になっています(最低賃金法第16条)ので、要注意!
では、特定最低賃金が適用されるのは、どういう人なのでしょう?

特定最低賃金は、特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。
まず、「特定の産業」は都道府県ごとに異なるため、事業場がある地域の「特定の産業」が何かをチェックしておきましょう(法律上追加・廃止の概念があるため、その点も注意)。

次に、「基幹的労働者」についてですが、基幹的労働者とは「当該産業に特有、主要な業務
に従事する労働者」
を指します。
基幹的労働者でない労働者の職種、業務は各都道府県ごとに決まりがあるので、こちらについてもチェックしましょう(例えば広島県だと「清掃又は片付けの業務に主として従事する者」と、下の「軽易業務」として業種ごとに定められている人は対象外)。

なお、以下は特定最低賃金の対象にはなりません。

  • 18歳未満又は65歳以上の方
  • 雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方
  • その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方等

都道府県ごとに若干の違いがあります。必ずチェックしましょう!

特定最低賃金は都道府県ごとに細かい違いがあるので要注意!

さて、いかがでしたか?
たとえ知らなかったとしても、最低賃金未満の賃金を支払っていると大きな労務リスクになります。
今回は「最低賃金のちょっとドキッとする注意点」というテーマで原稿を書きました。

最低賃金の大幅アップにより賃金改定を予定されている会社様は、しっかりと正しい基準をもって取り組んでみて下さいね。

分からないことや相談したいことがあれば、顧問社労士に問い合わせることをオススメします!

なお、社会保険労務士事務所スリーエスプラスでは、お気軽にご相談頂ける雰囲気を心がけています。
周囲に相談できる相手がいない場合は、ぜひお問い合わせフォームにてお声掛け下さい。

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